『銀木犀』長野まゆみ
『銀木犀』
長野まゆみ著、河出書房の文庫版。
この本をなんとなく遠ざけてきた理由は明白だった。私はとある動物の恐怖症で、その中でも最も苦手な姿で状態が出て来るのだ。
長野まゆみ初期の本をいくつか読んでいればすぐに察しがつくだろうし、私は恐怖症なのでその動物の名前を文面に残さないこととする。
木の中に閉じ込められる、というイメージは私の好きなもので、蔦性のものが何かに蔓延っていると、ゾッとしつつ胸が高鳴る。
この本から沢山の感性を貰った。泥に沈む、キリリと皮を剥く、雨水をのむ。好きな情景が詰め込まれているのに、恐怖症からその事も忘れていた。
読み返してよかった、と思いながらも、恐怖症は昔より酷くなっているので、少々辛い。
好きな筈なのに手が伸びない、にはこんな理由を抱えての場合もあるのか。